娘。新曲
- 1 名前:名無し娘。投稿日:02/07/08 22:48
- 「Do it! Now」 パート割り、歌詞
※録画をして何度も確認しましたが、間違ってる可能性もありますので
そこんとこ宜しくお願いします。
Do it! Now (矢口)
あなたが持ってる未来行きの切符 (安倍、後藤)
夢は叶う 絶対叶うから (安倍、後藤)
行こう(安倍、後藤)
最初のデートの帰り道 口付けしたのを覚えてる
ほんの一秒足らずでも (ここまで安倍)
Ah 一生忘れない (紺野)
何度か歩いた商店街 ギリギリ間に合った終電車
ドキドキしたと同じ分だけ 恋に落ちて行った(ここまで後藤)
どんな未来が訪れても(矢口、加護、新垣)
それがかなり普通でも(石川、吉澤、辻)
一歩一歩でしか進めない人生だから(高橋)
立ち止まりたくない(保田、飯田、小川)
Do it! Now (石川)
いつもいつまでも何年経っても(安倍、高橋)
決心したこの愛が続くように(安倍、高橋)
Do it! (保田)
あなたが持ってる未来行きの切符(後藤、紺野)
夢は叶うよ 絶対叶うから(後藤、紺野)
行こう(加護)
- 2 名前:名無し娘。投稿日:02/07/08 22:49
- 全然間違いだらけじゃん(w
- 3 名前:名無し娘。投稿日:02/07/08 22:57
- 間違ってたって(高橋) しょうがないでしょう(新垣)
迷ってたって始まんないでしょう(矢口)
誰もが不安な日本の現状 BUT(後藤)
「キスがしたい」(石川) が人間の本能(後藤、石川)
愛の形はイメージ通りです(飯田、辻)
恋の行方はあなたと二人です(吉澤、加護)
もっと下さい 愛を下さい(小川)
あなたの胸の中で…(安倍) いつまでも(安倍、紺野)
最後の電話になりそうな 喧嘩をした日もあったよね(矢口)
話途中でバッテリー切れて なぜか笑えてきちゃったわ(飯田)
覚悟するのは簡単だった(安倍、辻、小川)
愛がそこにあったから(保田、後藤、加護)
若かったあの日といつか笑えるような(新垣)
毎日を過ごしたい(石川、吉澤、紺野)
Do it! Now(石川)
宇宙のどこにも見当たらないような(後藤、紺野)
約束の口付けを原宿でしよう(後藤、紺野)
Do it!(高橋)
私の持ってる未来行きの切符(安倍、高橋)
あなたと二人できっと叶えたい(安倍、高橋)
I love you(安倍、後藤)
- 4 名前:名無し娘。投稿日:02/07/08 22:59
- これどうするんだ?
- 5 名前:名無し娘。投稿日:02/07/08 22:59
- 2 名前:名無し娘。 投稿日:02/07/08 22:49
全然間違いだらけじゃん(w
3 名前:名無し娘。 投稿日:02/07/08 22:57
間違ってたって(高橋) しょうがないでしょう(新垣)
- 6 名前:名無し娘。投稿日:02/07/08 23:00
- パート回数
飯田 4回
安倍 13回
保田 3回
矢口 5回
後藤 13回
石川 6回
吉澤 3回
辻 3回
加護 4回
高橋 8回
小川 3回
紺野 8回
新垣 3回
メインは安倍、後藤?
- 7 名前:名無し娘。投稿日:02/07/08 23:04
- >>5
ほんとだ
偶然?わざと?おもしろいね
- 8 名前:名無しさん投稿日:02/07/09 00:22
- >メインは安倍、後藤?
それは正解。
- 9 名前:名無し娘。投稿日:02/07/09 00:24
- 某所からコピペ。
[全員]Do it! Now
[安倍・後藤]あなたが持ってる 未来行きの切符
[後藤・安倍]夢は叶うよ 絶対叶うから
[高橋・紺野]行こう
[安倍]最初のデートの帰り道 [飯田](トゥルルル)
[安倍]口づけしたこと覚えてる
[安倍]ほんの一秒足らずでも
[紺野]Ah 一生忘れない
[後藤]何度か歩いた商店街
[後藤]ギリギリ間に合った終電車
[後藤]ドキドキしたと同じ分だけ
[後藤]恋に落ちて行った
[加護・矢口・新垣]どんな未来が訪れても
[石川・辻・吉澤]それがかなり普通でも
[安倍・後藤・紺野]Ha Ha Ha Ha...
[高橋]一歩一歩でしか
[高橋]進めない人生だから
[飯田・保田・小川]立ち止まりたくない
[全員]Do it! Now
[安倍・高橋]いつもいつまでも何年経っても
[安倍・高橋]決心したこの愛が続くように
[保田]Do it!
[後藤・紺野]あなたが持ってる 未来行きの切符
[後藤・紺野]夢は叶うよ 絶対叶うから
[加護]行こう
[高橋・新垣]間違ったって しょうがないでしょう
[矢口・保田]迷ってたって 始まんないでしょう
[後藤・紺野]誰もが不安な日本の現状
[吉澤]BUT
[石川]「KISSがしたい」
[後藤・石川・紺野]が人間の本能
[飯田・辻]愛の形はイメージ通りです
[加護・吉澤]恋の行方はあなたと二人です
[小川]もっと下さい 愛を下さい
[安倍]あなたのその胸の中で…[安倍・紺野]いつまでも
- 10 名前:名無し娘。投稿日:02/07/09 00:25
- [矢口]最後の電話になりそうな [新垣](トゥルルル)
[矢口]けんかをした日もあったよね
[飯田]話 途中でバッテリー切れて
[飯田]なぜか笑えてきちゃったわ
[安倍・辻・小川]覚悟するのは簡単だった
[後藤・加護・保田]夢がそこにあったから
[新垣]「若かったあの日」と
[新垣]いつか笑えるような
[高橋・辻・石川・吉澤・紺野]毎日を過ごしたい
[小川]Do it! Now
[飯田・保田]宇宙のどこにも見当たらないような
[保田・飯田]約束の口づけを原宿でしよう
[石川]Do it!
[後藤・保田]私の持ってる 未来行きの切符
[保田・後藤]あなたと二人できっと叶えたい
[小川]I Love You
[DJ]Do it! Now
[矢口]Yeah
[後藤・紺野・石川]Do it! Now
[後藤・紺野]宇宙のどこにも見当たらないような
[後藤・紺野]約束の口づけを原宿でしよう
[安倍・高橋]Do it!
[安倍・高橋]私の持ってる 未来行きの切符
[安倍・高橋]あなたと二人できっと叶えたい
[後藤・安倍]I Love You
- 11 名前:名無し娘。投稿日:02/07/09 01:09
- で、どんなネタスレにする?
- 12 名前:名無し娘。投稿日:02/07/09 14:21
- これ、密かにハロロリキッズがコーラス参加してるんだよな?
- 13 名前:名無し娘。投稿日:02/07/09 20:31
- >>12
マジで?
- 14 名前:名無し娘。投稿日:02/07/09 20:49
- >12
そうそう、初回特典のトレカにレアカードとして、キッズのやつが入ってるんだってな。
- 15 名前:名無し娘。投稿日:02/07/09 23:25
- >>13
デ(ry
- 16 名前:名無し娘。投稿日:02/07/10 01:25
- >>15
インジャー
- 17 名前:名無し娘。投稿日:02/07/10 02:07
- >>16
ナイ。オーイェー、気持ちが(ry
- 18 名前:名無し募集中。。。投稿日:02/07/11 03:55
- http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1017187545/
- 19 名前:名無し娘。投稿日:02/07/30 09:08
- http://1. ?? .
- 20 名前:名無し娘。投稿日:02/07/30 09:25
- http://1.??://1.?? http://1.??
http://1.?? http://1.??" http://1.?? http://1.??
http://1.?? http://1.?????? http://1.??????
- 21 名前:名無し娘。投稿日:02/07/30 10:15
- ‘; | | | |
- 22 名前:名無し娘。投稿日:02/08/14 22:22:28
- 保田圭1stシングル 「東京ブサイク」
- 23 名前:名無し娘。投稿日:02/08/14 22:28:19
- モーニング娘。 100thシングル「さすがにモーいいよ娘。」
- 24 名前:名無し娘。投稿日:2002/08/23 21:39:50
- 氏にスレ落ち。
- 25 名前:ゴリラ&&rrlo;ね氏&&rlro;投稿日:2002/08/24 00:02:24
- 26 名前:名無し娘。投稿日:2002/08/26 23:28:49
- 加護亜依1stシングル「いしかわのフン」
- 27 名前:名無し娘。投稿日:2002/08/26 23:38:01
- 後藤真希 5thシングル 「やる気! やっぱ difficult」
- 28 名前:名無し娘。投稿日:2002/08/26 23:49:15
- 平家みちよ「結局byebyebye」
うわーん!
- 29 名前:名無し娘。投稿日:2002/08/27 16:59:08
- >>28
ワラ・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
- 30 名前:名無し娘。投稿日:2002/09/04 23:41:10
- sage
- 31 名前:名無し娘。投稿日:2002/09/06 00:04:24
- 誰か>>26
にツッコんでやれ。
- 32 名前:名無し娘。投稿日:2002/09/07 07:31:14
- >>26
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|::::ミ ー- _ _ノノ ヾ_ _ -─ |::::|
|ゝミ ,,_ _ _ __ |::/
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し | /
ノ;;;;;;| 丿 丶 /:|
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ノ::::::::::i − ´ /::::::|
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- 33 名前:名無し娘。投稿日:2002/09/09 21:06:22
- ほぅ
- 34 名前:名無し娘。投稿日:2002/10/03 11:16:47
- >>26・27・28
大喜利ですか。
- 35 名前:名無し娘。投稿日:2002/10/03 12:24:24
- KIZについて語らない?
- 36 名前:名無し娘。投稿日:2002/10/14 21:03:36
- 37 名前:名無し娘。投稿日:2002/11/09 12:46:32
- いまさらDIN
- 38 名前:名無し娘。投稿日:2002/12/01 20:00:59
- 再利用していい?
- 39 名前:名無し娘。投稿日:2002/12/01 23:26:55
- >>38
どぞ。
- 40 名前:名無し娘。投稿日:2002/12/05 15:21:38
- じゃあ使わせてもらいますね。
羊や狼のスレの、あるCGIゲームが元ネタのネタ小説です。
ありがちな設定ですがよろしくお願いします。
- 41 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:27:22
『第3の娘。ロワイヤル』
- 42 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:28:04
- 【1】
「水10リットル1000クレジットだ」
売店の定員の男は水の入ったボトルをドンと机に置いた。
少女の手渡したカードから金が引きおろされる。
───いつものことながら高いよね。人の命が30リットルそこらの水の価値しかないっての?
ぶっきらぼうに差し出された水を少女は何も言わずに受け取った。
少女が歩いている建物は割と小奇麗でその廊下は病院や学校を思わせた。
長い廊下には部屋がたちならびポツリポツリと人影も見える。
水を持って廊下を歩いてる少女に人の視線が集っている。それは憎悪であったり、
畏怖であったり、さまざまだがとにかく悪意の視線である事は間違いないだろう。
中にはその少女に傷付けられた者、そして友人あるいは恋人が殺されたという者もいるのだろう。
───どうでもいいことだけどね
少女は思った。
- 43 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:28:56
- 「こんにちわ後藤さん」
その中の一人が少女に話し掛けた。
後藤と呼ばれた少女は足を止め、
「……誰だっけ?」
見覚えのない顔だったので聞いた。けだるそうに聞こえるような口調で言ったが
一応は気を引き締める。戦闘中ではないとはいえ油断は命取りになるからだ。
「……前田有紀といいます。聞いたことないですか?」
「ない。」
後藤は即答した。
「…そうですか。一応同じレッドチームで戦わせてもらってるんですけどね。
最近の成績はなかなかのものなんですよ?」
「あっそう」
またも即答した。後藤にとってどうでもいい事だったからだ。
「……あたしの事なめてるでしょう?」
「いや別に」
三度目の即答にさすがに前田と名乗った女もきれそうになっている。
「まあいいですよ。次の戦闘時は背後に気をつけたほうがいいですよ。それじゃ。」
そう言い残してその女(後藤はすでに前田の名前を忘れていた)は去っていった。
───…ま、どうでもいいや。部屋帰ろ
後藤真希は自分の部屋に向かって再び歩き出した。
- 44 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:30:05
- 部屋に帰った後藤が見たものは部屋の隅から噴出してくるピンク色のガスだった。
───チッ…もう次のプログラムか。最近ペース早くない?
心中で毒づいたが何の意味もない事は解っている。
水を一口だけ口に含み、質素な部屋のそのまた質素なベッドに横になる。
そしていつものように最悪の眠りについた───。
- 45 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:32:24
- 「……うう…ん」
木々の間から差し込む太陽の光で目を覚ました後藤が体を起こすと、そこは森のようだった。
見覚えのない場所だったので今まで来た事のないエリアなのかもしれない。
後藤は手のひらを握ったり、開いたりしてみる。
───ん。異常なし
別に根拠はないがそう思った。
『ピンポンパンポンピンポーン♪』
この場には不釣合いの滑稽なチャイムの音が聞こえてくる。これもいつもの事だ。
「みんな〜おはようさ〜ん!中澤管理長やで〜!
この放送で起きへん人は死んでもしらんで〜!」
───…いつもいつもハイテンションだねえ。
ま、あいつにとっちゃこれもただの酒の肴なのかな
「もうわかってると思うけど、今日は森のエリアや〜。っていうても森しかないわけやないで〜
いつものようにどっかにゃ診療所も廃屋もあるさかい利用してや〜。ほな、プログラム開始や〜
はりきっていきま〜…………しょ〜い!」
- 46 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:33:47
- ───相変わらずいらだつ放送……
放送を聞き終わった後、辺りはシーンと静まり返っていた。
後藤は近くに放置されていたデイパックからひとつの銃を取り出す。
後藤の愛用武器ワルサーPPK。
小型の自動拳銃で装弾数こそ少ないものの携帯性、命中率に優れている。
これは後藤が選んで申請し、有料で借用している。借り賃は5000クレジットと割高だ。
後藤がこの銃にした理由は特に無い。というかたまたま最初に選んだのがこの武器だっただけで、
その時はまったくの素人だったのだから理由がないのは当然の事だった。
───さて…借金が増えるのもだるいし、とっととやりますか…
借金が増えるというのは他でもないこのワルサーPPKを借りた金の事だ。
毎回のプログラムごとに武器を借りるのだから借金は放っておいても増える。
このような何もない孤島でどうやって借金を返すのか?答えはひとつ───
───人を殺して金を奪う。
どこかでタタタタ……という銃声。
すでに「イカれた金策」は始まっているようだった。
- 47 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:35:01
- ───スターターかな?
これは初心者の総称で、スターターは恐怖や混乱のあまり
異常に攻撃的になったり、あるいはこのいかれた状況に発狂する。
それゆえに中級以上のプレイヤーにとっては格好の餌食となる。
───はは。プレイヤーだってさ。こんな殺人ゲームにそんな俗称でいいのかな?
後藤は足早に、しかし注意深く銃声のほうに近づいていった。
割と近くのエリアだったようだ。
始めに銃声が聞こえ、悲鳴が聞こえてきた。後藤はそっと木の陰から様子を見る。
そこにいたのは今朝後藤にからんできた女だった。
「運が悪かったわね。あんたごときスターターじゃ私には勝てないってのよ」
撃ち殺した女に向かって得意満面に喋りかけている。
───馬鹿なやつ
後藤は木陰から狙いを付けてワルサーの引き金を引く。
その女の頭の一部がトマトのように吹き飛んだ。
- 48 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:35:57
- これで殺人賞として3000クレジット。
それにプラスして前田のカードに入っている金が
後藤の口座に振り込まれる事になる。
多分ワルサーPPKの代金を払ったとしてもプラスだろう。
───ついてたな。こんな馬鹿が生き残ってて
後藤がそう思った時、後ろにいくつかの気配を感じてすばやく身を隠した。
「この辺りじゃなかったかしら?」
「間違いないわ。どうする?手分けして探す?」
「それは危ないよ。固まって動いたほうがいいと思う」
「そうかな?」
四人の女たちが静かに会話しながら近くを探索している。
しかも全員がコストが高いはずのサブマシンガンを手にしていた。
───あれは…確かメロンとかいうユニットだっけ?
イマイチ優秀とはいえない三人を一人だけ能力の抜きん出た女が
まとめているという変り種のユニットだという噂だ。
───今回からこのレッドチームで戦う事になったのかな?ま、どうでもいいや
- 49 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:40:27
- 「どうする柴田?」
今まで何も喋らなかったリーダー格らしい女に一人の女が聞いた。
「……私と斎藤は左右に散って追い込む。大谷と村田はここに隠れて待機。
わたし達以外の人間を見かけたら即、射殺。いいわね?」
「OK」
「ん、意義なし」
大谷と村田と呼ばれた女が返事をする。
「じゃあ、行くよ」
柴田と呼ばれた女が足音を隠したとは思えないような見事なスピードで西に向かって走り去る。
同様に斎藤と呼ばれた女も(これは見事とは言いがたい)東に向かって走っていった。
「じゃ、隠れよう」
村田はやれやれ、といったジェスチャーをする。
「おっけー…でもめぐみ、一応あなたがリーダーなんだから柴、」
そこまで言ったところで大谷と呼ばれてた女の胸にポッと赤い穴が出来る。
大谷はゲブッと血の塊を吐いた後、前のめりに倒れた。
「雅恵!?畜生!どこだぁ!!」
「ここだよ」
後藤はすでに発砲した場所から回り込み、村田の後頭部に銃口を押し付けていた。
「え…?待っ…」
「さよなら」
ダーン、という音が響く。後藤にはいつ聞いても嫌な音としか感じない。
───これでもあたしは楽しんでる訳じゃないからね?
後藤は誰に言い訳するでもなくただ思った。
───さて撤収、撤収。あの柴田あゆみって女とはやりあわない方がいいかもだからね
後藤は静かにそのエリアから立ち去った。
- 50 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:41:31
- 後藤の行動は素早かったが、柴田という女の的確な指示からだろうか、
すぐに斎藤と呼ばれていた女が後藤を追う。そのグラマラスな体型にしては動きは早い。
タタタタタっ
後藤のすぐ後ろの土がマシンガンの銃弾によって巻き上げられた。
「この女ァ!絶対に逃がさないよ!!」
斎藤がマシンガンを乱射しながら般若の表情で後藤を追いかける。
───まいったな〜……足でも撃たれりゃ終りだね…
後藤は少し冷や汗をかきながらも身を低くして走った。
経験上後藤は自分がマシンガンの有効距離から外れている事は知っている。
───でもあたしもただ闇雲に逃げ回ってるんじゃない。…いや、適当に走り回っている事には
変わりないんだけど。でもちゃんと目的があるのよ?
後藤は近くの林の間を駆け抜ける。
- 51 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:42:32
- 「逃げられると思って……アウっ!?」
───…どうやらかかったね。ひとつめのお守りに───
さっきまでとは一転、足早に声のした所まで駆け戻る。
そこには左足の足首から下を失った斎藤が倒れていた。
マシンガンも転んだ時にでも落としたのだろう、幾分遠くに転がっている。
「ワイアロープだと!?アイツにそんなモノ仕掛ける時間があるはずが……」
足元の鋭い鋼線を見て斎藤が喚く。
それに構わず後藤は静かに背後から近寄り、絶対に外さない距離から斎藤の頭を撃ち抜いた。
足の痛みからか後藤に気付けなかった斉藤は
ドサッと地面に投げ出され、辺りの草木を赤く彩った。
───……これで逃げ切れりゃベストなんだけど……
後藤が思考を移そうとしていた時、
「振り返らない方がいいわよ。動いたら即、射殺よ」
背後でカチャリという音を聞いた。
- 52 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:43:53
- ───最低だ。一番やっかいなのを残して気を抜くなんて
今日のあたしはどうかしてる───
柴田あゆみは十分な距離を取って後藤を観察していた。
「…あなたがひょっとしてあの有名な後藤さん?」
「そうだけど?」
いつものトーンでそう答えた。
「ふ〜ん……私、柴田あゆみっていいます。
ブルーチームでは結構有名だったんですけど知ってます?」
向こうも同じようなトーンで聞いてくる。銃さえなければ普通の会話と見分けがつかないだろう。
「知ってるよ。あんただけだけど。他の三人は知らなかったわ」
「でしょうねえ。でもさすがですね。ブルーからレッドに移ってきていきなり三人ともやられるなんて
思わなかったですよ。でも、あの三人の預金はすでに後藤さんの口座に入ってるわけですよね?」
「だろうね」
───何当然の事を聞いてるんだろコイツ?
「じゃあ、あの三人の貯金も全部私のものになるんですよね?」
───ああ、そういう事か。なんのことはない、楽しんでるのか。
名前の売れているあたしの命を握っている事を───
- 53 名前:007〜投稿日:2002/12/05 15:47:11
- 「ねえ…あなたいつからこの『箱庭』にいるの?」
後藤は少し聞いてみたくなった。
「え?ここに来たのはほんの三ヶ月前ですよ」
「…そっか。じゃ、やっぱり経験不足だね。惜しいな。結構強くなれたと思うのに」
「…?何言って…」
そこまで言った時に柴田のマシンガンが彼女の手から離れ、勢いよく弾き飛ばされた。
当然、後藤がやったわけではない。後藤のふたつめのお守りだった。
「え!?」
驚愕して後藤の顔を見る柴田に、無言で銃を向け引き金を二回引く。
「…さっきの女(前田)も馬鹿だったけどあんたはもっと馬鹿だよ。
殺してもいない相手にペラペラ喋くってんだから。」
絶命した柴田を後にこの場を去っていった。
この日後藤はこの後も2人を殺した。
- 54 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:18:41
- 【2】
呼称、プログラム。それは一定時間内にノールールで殺しあい、
生存すれば勝ち、そうでなければ敗北の単純明快なデスゲーム。
『ビイイィィー』
後藤の耳にどこかのスピーカーからサイレンが聞こえた。
このサイレンを報せにプログラムは終了を迎える。
「ふう」
息をついて腰を降ろす。これから護送車が一人一人の生き残りを迎えにくる手はずになっていた。
一度のプログラム参加者は平均4、50人に対して生き残るのは多くて10人。
今回後藤は約五分の一を殺した事になる。これでも後藤にとっては珍しい事ではない。
参加者の体内に埋め込まれた発信機を頼りに護送車が迎えにくるのだが、
当然というか何というか、迎えが来ている間も殺し合いは続くので油断はできない。
───遠足はお家に帰るまでが遠足ですよ〜か?はは。くだらない
ほとんどの生き残り参加者がそうするように
辺境のエリアに潜んでいた後藤は一人毒突いた。
- 55 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:21:02
- ───この「箱庭」に来てどれくらいの人を殺したかな?
100?200?もっとかもな……
ふと昔を思い出した。過去を思い出すことで現実から少しでも目を逸らしたかった。
後藤真希は真面目とはいえない高校生ではあったが
普通に暮らしていたし、平凡な恋もする普通の高校生だった。
それがふとしたきっかけで万引きをしてしまった。思春期特有の悪への憧れだったのかもしれない。
しかしそれは簡単に見つかって捕まった。
それからだった。何かが狂っていたのは。
その店には万引き常習犯のグループがいるらしくその被害額は結構なものだった。
その万引き全てを後藤の所為にされ、刑務所に入れられる事になった。
家族が文句を言おうとしたが後藤は家族を止めた。そんな事を警察に言おうものなら
たちまち射殺されてしまうかもしれない。「公務執行妨害」という名目で。
───そういうイカレた国なのだ。この波浪帝国は。
- 56 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:24:19
- そして後藤が連れてこられた刑務所。
それが通称「箱庭」と呼ばれているこの離島だった。
───それからはもう異常の連続だった。
いきなりプログラムとかいうのに無理やり参加させられ、
「ハイ、殺しあってください」
───出来るわけないじゃん。
後から知った話だけどスターターの生き残れる確率は二割以下らしい。
訳わかんなかったっけ。怖くて隠れているあたしに聞こえたのは銃声と悲鳴…
……そして終了のサイレン。
───でも本当に辛かったのはむしろその後だったな……
刑務所の宿舎とやらになんとか生きて帰ってきたあたしは何もない、
毛布すらない殺風景な部屋にぶち込まれ、食事どころか水さえも満足に与えられなかった。
この「箱庭」では金がないものはシャワーすら浴びられない。それが唯一のルールだった。
───餓えたっけ。何も考えられなくなるくらい…
しばらくして次のプログラムになった。
- 57 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:27:27
- ───それでもやっぱりあたしには殺せなかった。
可哀相だから、とか人殺しはよくない、
とかの感情で殺せなかった訳じゃない。ただ殺す能力が無かっただけだ。
それを察知できるのかなあのスターターキラーってやつは…
必死で走って逃げたっけ……
- 58 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:28:59
- 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、……!」
次のプログラムの時に後藤は一人の女に見つかり追いまわされた。
「待ちなよ〜!銃持ってるんだから戦えばいいじゃ〜ん。アハハハっ!」
女がマシンガンを乱射すると舗装されたアスファルトが弾丸で砕かれ跳ね上がる。
「きゃうっ!?」
足がもつれてスッ転んだ。空腹もすでに限界だった。
「もう終わり?じゃ・あ・ね」
女が後藤の顔面に銃口を合わす。
───あたし、死ぬんだ……
恐怖の中なぜか冷静にそんな事を考える。だがそうはならなかった。
「あっ!?」
いきなりその女の足に穴が開いた。続いて肩にも。
「だ、だれだっ」
叫んだ方向の茂みから一人の女、後藤と同じ年くらいの少女が現れた。
「いぃぃ、市井紗耶香!」
銃口をその市井と呼んだ少女の方に向けたが、
素早く手を撃ち抜かれる。恐ろしい程精密な射撃だった。
「あ、あ……」
女の銃は、はじかれて近くの草むらに音を立てて落ちた。
- 59 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:31:24
- 「ねえ」
少女はあっけにとられている後藤に声をかける。
「あんた。そこのあんたよ。あんたスターター?」
「ス、スターターってなんですか?」
この時、当然スターターという単語の意味など後藤は知らない。
「…間違いなくスターターだね。で、どうする?」
「どど、どうするって?」
その少女が何を尋ねているのかが理解できない。
「こいつをよ。その手に持ってる銃で撃ち殺す?」
後藤の右手にはまだ一度も使われたことのない銃があった。
「それは…」
「できない?」
「……………………」
後藤はうつむく。少女はそれを肯定と取った。
「じゃあ、私があんたを殺すわよ」
「…え?」
少女の行動の意味がつかめなかった。
- 60 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:32:58
- 「だってそうじゃん。自分を狙ってたヤツすら殺せないようなヤツが
生き残れるわけないでしょ?じゃあ私に殺されてお金になってよ」
つらつらとかなりの無茶を言う。
「……そんな…」
「だいたいあんた、まだ一人も殺った事ないんでしょ?お腹すいてないの?」
「……空いてる…」
正直に答えた。少し頬が赤くなる。
「じゃあ、自分で稼ぎなよ。働かざるもの食うべからずだよ。この刑務所での通貨はね、
電子マネーだから他人に譲与できないんだ。食べものほしいなら自分でやんなよ」
その少女は冷たく、そしてなんでもない事のように言った。
───どうしよう…あたしは死にたくない。餓死なんて絶対に嫌だ。
それにこいつは何も出来ないあたしを付け狙ったんだもの。
それにいまの状況なら正当防衛のはず…それに、それに…───
───…っていうかお腹空いた!!
- 61 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:34:17
- 後藤が銃口を倒れている女に向ける。
女は逃げようともがくが痛みからか歩は進まない。
「ひひぃ……」
女は震え、顔を恐怖で後藤が見たことも無いような形にまで歪めていた。
「……………」
それを見て何故か後藤は空腹も忘れ、女が可哀相になった。
「……やっぱりできないようだね」
少女が静かに後藤に向って、
「参考程度に教えておくよ。そいつみたいなのをスターターキラーっていってね。
あんたみたいなここにきて間もないヤツや何も出来ないヤツしか狙わない」
嫌悪をあらわにして言った。
「しかも、たいていのスターターキラーってヤツは人を狩る事を楽しんでいる最低の糞野郎だよ。
…ま、殺んなきゃ殺られるこの箱庭でそんな甘い事言ってるヤツは少ないけど」
後藤の耳に予想もつかなかった言葉が届く。
少女はやれやれ、といったように両手を上げた。
- 62 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:36:18
- ───…楽しむ?そんな事あたしにはできない。
こんなに恐怖に震えている人を撃つなんて楽しめるわけがない。
でも、この女は恐怖に逃げるあたしを追い、殺そうとした。
今までも何もできない人達を殺してきたのだろう。
みんな、痛いのは嫌なのに……
───みんな、死にたくないのに……
後藤は銃口をその女のこめかみにあて、思い切って───引き金を引いた。
凄い衝撃がして女はゆっくりと倒れていく。
ほんのニ、三秒だったであろう時間は後藤にはとても長く感じた。
「……おめでとう。っていうのも変だけど。
あんたは「生きる」側の人間になったんだ」
人を殺したショックに腰を抜かした後藤に少女は手を差し伸べた。
「立てる?私は市井紗耶香。あんたは?」
「後藤……真希」
───それが市井さんとの最初の出会いだった。
- 63 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:38:56
- 市井さんにはここで生き抜く全てを教わった。
戦闘、戦略、箱庭での暗黙のルール。その全てに市井さんは恐ろしいほどに博識だった。
あたしはただ必死に市井さんについていっただけだ。ある時あたしは市井さんに尋ねた。
「何故、あたしに生き残る方法を教えてくれるんですか?」
市井さんは少し考え込んで言った。
「………恩返し、みたいなもんかな?」
「…え?」
「いや、なんでもない。気が向いたのさ」
あたしにはその意味が理解できなかったが
市井さんは早く忘れろ、とでもいうように片手を左右に振っただけだった。
あたしはプログラムを重ねるごとにメキメキと腕を上げ、殺人数もグングン伸びた。
いつからかあたしはだれからも恐れられるようになっていた。
- 64 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:40:27
- 「……………」
車のエンジン音が聞こえる。お迎えが来たようだ。
『受刑ナンバー51143聞こえていたら速やかに現れろ』
その放送を聞き、後藤はわざとのろのろと護送車の方に向かった。
「…後藤さん、また生き残ったようデスネ」
見覚えのある女が後藤に声をかけてくる。
「RURU。なんであんたがお迎えしてくれるわけ?」
「人材不足デネ、な〜んて。一般兵の護送ではあなたは危険すぎますカラ」
ヘラヘラと笑うRURU。後藤はこの女が嫌いだった。
「…あっそ」
「さ、銃を渡してください。それとも…戦りマスカ?」
───冗談じゃない。
RURUの後ろには機関銃を持った兵が数人控えてるのだ。
- 65 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:41:45
- RURUはT&Cボンバーという凄腕の戦闘ユニットの一人で、
元は受刑者としてプログラムに参加させられていたにも関わらずその腕を見込まれ、
箱庭の管理長である中澤の近衛兵に抜擢された程の実力者だった。
───とはいえ1対1なら負けないよ?
心中で毒を吐きながらも後藤は素直に銃を渡そうと
ワルサーの銃身を持ち、銃を差し出した。
「…そうそう。それでいいんデスヨ」
「……………」
「それにしても…そんなに生き延びたいですカネー。人を殺しまくってマデ」
銃を受け取ろうと手を伸ばしながらRURUは言った。相変わらずにやにやと笑いながら。
その言葉に後藤の頭の中で何かがぶち切れた。
- 66 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:42:49
- 後藤の手の中でクルン、と銃が回転する。後藤は一瞬にして銃身からグリップに持ち替え、
引き金に手をかける。銃口はRURUの額にピタリ、と付いていた。
「…ご、後藤サン?」
完全に油断してたのだろう。RURUは普段ならこの程度の動きを見逃す事などない。
「…誰があたしに人を殺させてるんだっけ?」
「チョ…やめなさい!後ろに控えてる兵が見えないんデスカ!」
RURUの額をたらりと汗がつたう。
「…あんたらはいいわよね?高みの見物?同じ立場だった人間に対して?」
「チョ…!お前ら、撃て!撃ち殺セ!!」
後ろの兵達にRURUが命じる。だが兵達がマシンガンを構えるより前に後藤の銃が火を噴いた。
乾いた音がしてRURUは勢いよく倒れた。
「…なぁんだ。やっぱ自分が撃たれたらへらへら出来ないんじゃん」
「き、貴様!」
兵達が一斉に後藤に銃口を向ける。しかし後藤は銃をポイッと兵達の方へ捨てた。
「…あたしを殺すの?あんた達にはなんのメリットも無いよ?」
後藤は知っている。こうすればなんの権力も持たない一般兵は受刑者を殺す事は出来ない。
そして後藤は思惑通り怪我ひとつなく宿舎まで帰る事ができたのだった。
- 67 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:44:03
- 「後藤!貴様!!」
宿舎に帰ってきた後藤に数人の女が怒りの表情で出迎えた。
───T&Cの信田、稲葉に小湊、か。おいでなすったね───
「よくもRURUをぉ!」
怒りに燃える三人は全員銃を携帯している。銃を持たない後藤は何の抵抗もできない。
「…やっほー」
だから減らず口をたたいた。
「こ…け…か…!」
小湊は怒りのあまり口も利けない。
「…何故殺した?」
信田が聞いてくる。彼女は怒りを表にださず静かに、だが瞳に憎悪をたぎらせて尋ねた。
───こういうタイプが一番敵にまわしてやっかいなタイプなのよね…
「別に。プログラム中に近づいてきたから敵と思っちゃって。あはっ」
でも減らず口をたたいた。
- 68 名前:007〜投稿日:2002/12/06 22:45:01
- 「あんた…うちら三人に勝てると思っとんのか?」
稲葉が問う。正直、無理だろう。一対一でも厳しいはずだ。
「……………」
後藤は答えなかった。こいつらに対して負けを認めるのはゴメンだった。
「…まあいい。行きな」
稲葉が静かに言った。
「稲葉!?」
怒りを込め、後藤を睨みつけていた小湊が抗議する。
「…仕方ないだろう。こいつを今殺す訳にはいかない…」
「…ち、きしょう…」
意外だった。後藤は殺されないまでも手足の2、3本は折られるかと思っていたのだ。
だがそんな気持ちは表情には出さずさっさと宿舎に向かって歩きだす。
「後藤!一ヵ月後を楽しみに待ってな!なぶり殺してやるからな!」
去り行く後藤に向かって誰かが叫ぶ。
後藤は振り向かずにバイバイ、と手を頭の上で振った。
- 69 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:25:11
- 【3】
───1ヵ月後ぉ?
宿舎の廊下を歩きながら言われた事について考える。
───なんだろ?警備担当のあいつらと戦うわけないし、
殺されるにしても一ヶ月間生かしておく意味わかんないし…
ふむぅ、と腕を組む。
───ま、いいかぁ
なるようになるだろ、と思考を中止した。
考えすぎないのは後藤の長所なのだ。同時に短所でもあるわけだが。
刑務所内はある程度自由に歩き回ることが許可されている。
食堂もあるし、購買もあれば運動場まである。
皆、ひと時の平和を満喫しているように見えた。
一人でトレーニングをする者、スポーツを楽しむ者、語り合ってる者。
それは友人同士であったり恋人同士であったり(女子刑務所なのに!)
様々だがこれは見せかけの平和でしかない。
もしかしたら一時間後には殺し合わなくてはならないかも知れないのだから。
だがここにいる誰もが今は殺し合いの事など考えてはいないだろう。考えたくないのだ。
後藤も例に漏れず、ひと時の平和を感じるためにある場所に向かっていた。
- 70 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:26:53
- 目的の場所についた後藤はトントン、とドアを叩いた。
「…誰?」
聞き覚えのある声。後藤にとってすごく暖かい声。
「後藤だよ」
後藤はすぐにでも飛び込みたい衝動を我慢する。
カチャ、と鍵の外れる音がしてドアが開いた。
「…よ。今回も無事だったようだね」
中から現れる端整、とは言えないまでも優しさのあふれる顔。
「…圭ちゃん〜………」
その顔を見た瞬間後藤のはりつめていた気持ちが一気にくずれ、
鼻の奥がキュン、といってしびれた。
「う、うわああぁぁぁぁ…」
後藤は目に涙を溜めながらその女の胸に飛び込んだ。
「…よしよし」
女は後藤をしっかりと抱きしめる。
「あ、あたし、また人、殺しちゃった、殺しちゃったぁ…」
後藤は全てを吐き出すように泣き、そして叫んだ。
「…うん。そうだね、怖かったね…」
保田圭は再びよしよし、と後藤を抱きしめた。
後藤にとってこの刑務所で唯一、この瞬間だけは16歳の少女に戻る事のできる時間だった。
- 71 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:27:53
- …数分程泣き続けただろうか。
後藤はパッと保田の胸から離れる。
「ふぃ〜、すっきりした!」
晴れ晴れとした笑顔で言った。
「…はぁ〜…いまだにその切り替えの早さが理解できないわ…」
保田が少しあきれたような顔を見せる。
「いいの!いつまでもやられてちゃ迷惑でしょ?」
「それもそうだけど」
保田が笑いながら言う。
しかし後藤はきっと圭ちゃんはいつまでも抱きしめていてくれる、と思った。
「いつもの儀式は終ったかい?」
保田の部屋なのだが、市井紗耶香が保田のベッドに座っていた。
「あ、うん。見苦しい所をお見せしました」
後藤はちょっとふざける。
「もう慣れたけどね。最初は発狂したのかと思ったよ?」
と爽やかな笑みを浮かべる市井。
これは後藤の恒例行事みたいなもので戦闘の後、
後藤は高まった感情を元に戻すために思いっ切り泣く。
それは後藤にとって発狂を防ぐ術のひとつだった。
「ひどいなあ〜」
後藤は笑った。この時間がいつまでも続くように。
- 72 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:28:53
- 「…ところで後藤」
ふいに市井の目が真剣になる。
「…はい」
後藤もふざけるのをやめた。
「さっきの戦闘、ちょっとあらが目立つよ。圭ちゃんの仕掛けたワイアロープにも頼ったし、
あたしの援護射撃にも頼った。いつも一緒に戦闘に出られるとは限らないんだからね?」
市井から駄目出しを食らう。もう何十回食らった事か。
「…ごめんなさい」
「ごめんなさい、って私に謝られても困るよ。要はあんたの命の問題なんだからね」
シュン、となる後藤。
「しかもあんたあの女(柴田)殺した後なんか喋りかけてなかった?」
「うぐ!?」
「うぐ、じゃないよ馬鹿。そんな事してて敵に見つかったらどうすんの?」
後藤は前田に対して馬鹿な奴、と罵った事をそのまま市井に叱られる。
「まあまあ紗耶香」
「圭ちゃんは黙ってて」
「…は〜い」
保田の助け舟もあっさりと転覆する。
保田がトラップを仕掛け、後藤が前線で敵を叩き、
市井がライフルで二人を援護する。これがこの三人の戦闘スタイルだった。
しかし市井の言葉通り、この宿舎内に200人以上居る中から
ランダムに選ばれる4、50人の中に常に三人が同時に含まれるとは限らない。
よって三人は一人ずつの時は当然違った戦法が要求された。
「今回みたいに未然に三人同時に出れる、
っていう情報がつかめたからよかったものの、後藤?
あんたは私や圭ちゃんに頼りすぎる。そういう覚悟じゃいざって時に………」
その後小一時間ほど後藤は今回の反省点を説教された。
- 73 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:29:40
- 「話は変わるけど…あんたRURUを殺ったらしいね」
唐突に市井が後藤に聞いてきた。
「え、もう知ってるの?なんで?」
後藤は聞き返す。
「え!?T&CのRURU!?」
保田が飛び上がった。
「うん…いけなかったかな?」
「いけなかったっていうか…よく殺されなかったわね!」
保田が驚きを隠せず話に割り込んでくる。
「…やっぱり本当だったんだ」
市井は何かを考え込みだしたが、くるり、と二人の方を向くと同時に口を開く。
「何か妙な事を言われなかった?」
「なんか…一ヵ月後を楽しみにしてな、とか…」
「…!…そう…やっぱり…」
市井はなにか納得したような顔をした。
「え?なになに?どういう事よ?」
保田が二人の顔を交互に見回す。
「市井さん、なんか知ってるの?」
市井はやはり少し考えていたようだがやがて口を開いた。
- 74 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:30:21
- 「…最近プログラム参加者の腕が上がってきたと感じた事はない?」
「え?そうかな?でもワイアロープに引っかかる人が若干減ったかな?」
保田が指を唇にあてる。保田はトラップの名手で彼女が仕掛けたワイアロープは巧妙に隠蔽され、
よほど注意深く見ないと熟練者でも罠に落ちる。保田は彼女だけの独自の方法により他の参加者が
行動を始める前から広範囲にワイアロープを張り巡らせる事が出来た。
それはこの三人にとって大きな武器の一つとなっている。
「…そういえば今日、メロンとかいうユニットがいたな」
後藤は今日戦った人間を思い出した。
「ああ。そいつらもそうね。多分、主催者側が意図的に強い連中を集めだしたんだ」
市井の顔色はすぐれないように見えた。
「なんで?」
後藤にはさっぱりわからない。
「…ある筋からつかんだ情報なんだけど…」
市井は恐ろしい程に箱庭内の情報に詳しい。つい数十分前、後藤がRURUを
殺したのをすでに知っていたように、だ。そしてその情報が間違えていた事はない。
「…サバイバルが行われるらしい」
市井は一段と声を低めて言った。
- 75 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:31:13
- 「さばいばる?」
後藤はぼけた声を出す。
「なにそれ?」
保田も聞く。
「…全ての人間、六つのエリア全ての領地を使っての殺し合い。
それも最後の一人になるまで続くそうよ」
市井は二人を同時に見る。
「はあ!?」
「なによそれ!?」
後藤と保田が同時に叫んだ。
箱庭は後藤達のいるレッドチームのエリア、メロン達のいたブルーの他にイエロー、
そして20人から30人の少数のプログラムを実行しているハッピーエリア、
ダンスエリア、セクシーエリアと六つのエリアから成り立っている。
自分から申請でもしない限りエリアを移る事は普通は無い。
「…今までちょっと信憑性がなかったんだけど後藤の話を聞いて確信した。サバイバルは行われる」
「そんな!」
保田が立ち上がった。
「管理者側は今、すでにいくつかのユニットが存在する事を黙認してるじゃない!
仲間同士で殺しあえっていうの!?」
後藤も全く同じ事を考えた。
───あたしには絶対にできない。できるはずない。
「だろうね」
だが市井はそう言い放っただけだった。
- 76 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:32:09
- 「…紗耶香、あんたは平気なの?わたし達を殺せるの…?」
保田の顔が引きつった。小さい子なら泣いてしまうかもしれない。
「もう、圭ちゃんちょっと落ち着きなよ。あたしはサバイバルが行われる、
と言っただけでまだ何にも言ってないでしょ」
「でも!やらなきゃやられるってのはここでの常識じゃない!」
「だからって圭ちゃんに私や後藤が殺せる?私にはできない」
それを聞いて保田はストン、と腰を落とす。
「じゃ、どうするっていうのよ…三人共…死ぬの?」
「だからそんな事言ってないじゃない」
保田と市井の問答は続く。が、市井は保田と後藤に顔を寄せて言った。
「箱庭を脱走する」
- 77 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:32:55
- 「!!」
後藤と保田は驚きに声も出なかった。
「それしかない、と思う」
市井は自分の言葉を噛みしめるように言った。
「でも…以前にそれは絶対不可能だって…」
「…普段のプログラムなら絶対に不可能よ。
一人一人に厳重な警戒態勢がしかれてる。でも今回は話が別よ。
六つのエリアから人が集れば150人以上は集るはず。きっと警備にも穴が、開く」
「でで、でも体に発信機が埋められてるのに?」
保田も疑問を口にする。
「発信機だけよ。爆弾や盗聴器なんかが埋められているわけじゃない。
ある程度まで逃げたらどっかで手術して取り出せばいいよ」
「……………」
二人は沈黙した。いけるかも。生きて再び家族に会えるかも知れない。
- 78 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:33:32
- 「でも問題が二つある」
市井はあくまでも冷静さを保つ。
「「なに?」」
後藤と保田がハモった。
「ひとつは…後藤に言った言葉から推測するに、T&Cが戦線に出てくる可能性がある事。
そして多分、私達を執拗に付け狙うだろうよ」
「…あたしが今日あんな事したから…ごめんなさい…」
後藤が泣きそうになる。
「…いや、どっちにしろ名の売れてる私達も狙ってきたはず。
むしろRURUを今日殺れたのは大きなプラスよ」
T&Cは一人一人でも戦闘力はトップクラスだが、
その四人がコンビネーションを組むとさらに戦闘力が上がる。
もっともそのコンビネーションがお披露目される事は二度と無いが。
「でもまあ…今日の事でT&Cは私達だけを狙ってくるかもしれないから…プラマイゼロかな」
市井があごを掻きながら言った。
- 79 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:34:14
- 「もう一つの問題ってのは?」
保田がせかす。
「カードが足りない」
「カード?」
「うん。接近戦の後藤、援護の私と圭ちゃんじゃ厳しいと思う。
少なくとも接近戦のできる奴があと一人は必要になる」
「なるほど…」
後藤はうなずいた。
「…とりあえず当てはあるけど」
「「誰?」」
またハモる後藤と保田。だが今の二人にそれを笑っている余裕は無い。
「吉澤…しかいないと思う」
「吉澤?吉澤ってあの吉澤?」
後藤も知っている名前だ。
「…無殺の吉澤、ハイエナひとみ、の吉澤?あいつ強いの?」
保田が一番重要な事を尋ねた。
- 80 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:35:11
- 「確か殺害数0なんでしょ?武器を借りないから借金はしないけどハイエナで食ってるって…」
吉澤ひとみはもう箱庭に半年もいるのに、いまだ殺害数0という信じがたい記録を持っている人間だ。
後藤が聞いた話では死体からや戦闘で他人が落とした武器を拾い集めクレジットに変える、
『ハイエナ』と呼ばれる行動で食いつないでいるらしい。
普通ハイエナとは自力で敵を倒せない弱者を侮蔑する名称だ。
(動物のハイエナには失礼な話だが。彼らは狩りの名手なのだから)
「そう、でもそれは弱いからじゃない。
私達が出来なかった『誰も殺さずに生きる』を
この箱庭の中で実践している。彼女は強いよ。心も体も」
市井は吉澤の戦闘を見たことがあった。吉澤は銃を持った相手に対し、
正面から武器を奪い去ったうえで気絶させたのだ。
その動きは人間の動きを越えていたように市井には見えた。
「まあ紗耶香がそう言うんなら…」
「うん…異存はないよ」
「そう。じゃ行こうか?吉澤に会いに」
「え!?今から?」
「そう。異存無いんでしょ?」
「う。でも心の準備ってやつが」
後藤はごねる。
「悪いけどあんたの心の準備なんて待ってられないよ」
後藤の言い訳など通じるはずもなく、
すぐに後藤は保田の部屋を強制退室させられた。
- 81 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:36:01
- 「…ここよ」
と市井がひとつのドアの前で止まった。
「市井さんってなんでも知ってるよね…」
普通、他人の部屋など絶対に知りはしないのだ。
稼いでる人間は窃盗が入るかもしれない。運が悪いと殺されるかもしれない。
一応、宿舎で殺人などしても重い刑罰が下るだけでなんの得にもならないのだが
怨恨やプログラム時の保身のために、処罰覚悟で強者を暗殺する者も実際に居たらしい。
コンコン
ドアをノックする音が後藤にはやけに大きく聞こえた。
- 82 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:36:36
- 「…誰?」
しばらくして低い声の返事が聞こえてきた。
「始めまして。市井紗耶香といいます。お話があるんですが…」
ドアの向こうに話し掛ける。
「あたしはありません」
しかし扉の向こうから冷たい答えが返ってくる。当然だが警戒されているようだった。
「大事な用なんです」
「じゃあ、そこで話してください」
「人がいます。中に入れてもらえませんか?」
市井と吉澤はドア越しに問答を続けるが、
後藤は吉澤の態度にイライラしてきた。
「ちょっとぉ開けてよ!話があるんだってば!」
ドアをガンガン叩きながら言った。慌てた市井と保田に後藤は押さえ込まれる。
「ごめん…あんたが警戒するのはわかるよ。でもここは宿舎だから当然銃は持ってないし、
もしわたし達があんたに襲いかかってもあんたには素手同士なら絶対に勝てない。でしょ?」
保田も説得する。
「……………」
少し沈黙の時間があったがやがてドアがキィ、と開いた。
- 83 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:37:27
- 「…どうぞ」
中は質素な部屋だった。刑務所なのだから当然なのだが。
「ありがとう」
市井がすいっと中に入る。後藤と保田もそれに続く。
「なんのようですか?」
吉澤は警戒心をあらわにしていた。
もっともこのメンツに囲まれては警戒するのが当たり前だった。
「…いきなりだけど短刀直入に言うよ。吉澤、あんたに『プッチモニ』に入ってもらいたい」
市井は真っ直ぐ吉澤を見て言った。
プッチモニとは市井、保田、後藤の三人からなるユニットでこの箱庭で知らない者は居ない。
総殺害数は500とも1000とも言われているがそれが事実かどうかは本人達さえ知らない。
本人達だからこそ、自分の手を血で染めた回数など知りたくもないのかも知れない。
「何言ってるんです?」
吉澤は警戒を残した表情で聞く。
「あんたの力を評価してる。わたし達のユニットに入って」
保田が言葉を足した。吉澤は少しだけ考えているようだったが
やがて静かに、しかしハッキリと言った。
- 84 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:38:24
- 「お断りします」
「なんでよ!?」
たまらず後藤が叫ぶ。その後藤を市井が黙って手で制した。
「理由を聞かせてもらえない?」
あくまでも冷静に市井が聞いた。
「…あなた達が人殺しだからです」
冷たい、海の底のような瞳で吉澤は三人を見つめた。
「……………」
何も答えない三人に吉澤が続ける。
「…あたしは馬鹿だし、人にもよく騙された。ココにいるのだって人に騙されたのが原因だ。
でも越えちゃいけない一線ってのはよくわかってる。人殺しなんてやっちゃいけないんだ絶対に」
───誰が好きで人殺しなんかやってるもんか!
後藤はムカッときた。後藤の動きを察したのか市井はチラリ、と
後藤の動きを目で制する。吉澤はさらに続ける。
「あなた達は今まで何人殺したんです?100人?200人?
……人殺しなんて信用できるか!!」
吉澤の言葉は三人の心に深く突き刺さった。
- 85 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:39:41
- 沈黙が辺りを支配する。
「…吉澤。」
少しの間誰も口を開かなかったがやがて市井が静かに語りだした。
「…あなたの言いたい事はよくわかる。
あなたがこの箱庭の中で誰一人殺してないのも知ってる。
でもね。みんながみんなあなたのように強くはないの。
…殺さなきゃ、生きていけない人もいるの」
「……………」
吉澤は目を合わせずにその声だけを聞いていた。
「私達は数え切れない程の人を殺したと思う。でもそれは生きるため。
生きて家族にもう一度会うためよ。…それはあなたも同じなはず」
「詭弁だ!」
「違う。詭弁なんかじゃない。私達はそのためだけに生きてきたし、
それが叶うならなんだってするわ。人殺しでもね」
- 86 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:40:26
- 市井の言葉に吉澤は再び黙りこむ。
「…それに私達が殺したのは私達に戦闘する意思を向けた人達だけ。
スターターを殺した事は一度もない」
「…でも」
吉澤は言葉を濁す。
「あなたと戦いたくない。これじゃ一緒に戦う理由にならないかな?」
「……………」
それでも吉澤は首を縦には振らなかった。
「そう。本当は良い返事をもらってから話したかったんだけどな。仕方ないか」
市井はやれやれ、というふうにガリガリと頭を掻いた。
「今から恐らく一ヵ月後。サバイバルが行われる」
市井はさっきの話を吉澤に話し始めた。
サバイバルの事、脱走計画の事───その全てを包み隠さずに。
- 87 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:41:40
- 最初のうちは疑いの表情だった吉澤も信用し始めたのか
話の終る頃には真剣な表情になっていた。
「…以上よ」
市井が全てを話し終える。
「どう?これでなぜ私達があなたを必要としているかわかってもらえたかな?」
「…そんな事が本当に行われるんですか…?」
吉澤は茫然自失になっている。
───そうだろうね。生き残るために絶対に人を殺さなくちゃいけないんだから。
後藤は吉澤が本当に真っ直ぐな心の持ち主だという事を悟った。
「紗耶香の情報は100%正確よ。一度だって間違っていた事はないわ」
保田が再び補足する。
「もう一度言うよ。人を殺すためじゃない。ここを逃げ出すためにあなたの力を貸して」
市井は貫くような真っ直ぐな眼差しで吉澤をみつめた。
「……わかり…ました」
ようやく吉澤は了承した。それでも表情は渋めだったのだけれど。
- 88 名前:007〜投稿日:2002/12/11 18:43:56
- 吉澤は話を了承したものの、四人を包む空気は重い。
さきほどの言動を気にしているのか、吉澤は市井の方をチラチラ見ながら
何を切り出せばいいのかわからずにいるようだった。しかしおもむろに後藤が動いた。
「…それじゃよろしくね!よっすぃー!」
シーンとして小虫の羽音さえ聞こえてきそうな空気の中、
後藤はひょうきんにバシン、と吉澤の背中を叩いた。
「よ、よっすぃー?」
「だめ?」
「い、いや、いいけど…」
お互い仲間になれたという安心感からなのか、やっと場の緊張した空気が多少ゆるむ。
しかし最後に一言だけ吉澤が付け加えた。
「…でも、それでもあたしは人を殺せません。
相手を戦闘不能状態にする位しかお役には立てませんよ。
…それでいいんですか?」
「上等よ。それ以上望んだら保田大明神がバツをくれてやるわ」
保田がちゃかす。後藤達は笑った。それが仲間としての絆を強めてくれるような気がして。
その日、プッチモニは四人になった。
- 89 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:41:43
- 【4】
「一ヶ月後かあ…」
後藤は自室のベッドで横になってつぶやいた。
───逃げられるのかな…。ううん、大丈夫だよね。
なんたってあの市井さんが計画したんだもん
後藤は不安を必死に打ち消そうとする。
箱庭を逃げ出そうとした人間を何人も知ってる。
誰一人それが成功してないことも。ふと、出来の悪かった弟の顔を思い出した。
今でも家族の顔を思い出すと泣きそうになる。
───会いたい
それが今の後藤にとって一番の願いだった。
- 90 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:45:17
- 一ヶ月という時間はあっという間にすぎていった。
その間に計画を練り、情報を集め、あわよくば仲間も、という話だったが
市井の判断で信用できない人間は仲間には出来ないと決めていたので
結局、仲間が増えることはなかった。
一ヶ月間の間に市井と保田は一度ずつプログラムに参加させられたが二人共無事に生還。
吉澤と後藤の方はというと幸運な事にプログラムの呼集はなかった。
「…あれから一ヶ月と三日たった。そろそろじゃないかな?」
と市井が言ってからもう一週間。後藤は、そもそもサバイバルの話すら
事実ではなかったのではないか?と思う事があった。
だがついにその日は訪れた。
- 91 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:46:08
- ───いい〜天気〜…
後藤は初夏の陽射しの中、中庭で何をするでもなくボーっとしていた。
市井達はそれぞれの仕事がなにやら終ってないらしく、吉澤は自主トレーニングに夢中だった。
───こういう日はお弁当でも広げてさ〜……
そんな事を考えていたときだった。ザザ、と無機質な機械音が聞こえてきたのは。
『みんな〜おはようさ〜ん!』
このうららかな日に最も聞きたくない声。
『中澤管理長やで〜!今日はみんなに耳よりな情報がある〜!』
刑務所のスピーカーから刑務所内全てに
聞こえそうな(聞かすつもりなんだろうが)声が響く。
- 92 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:47:57
- 『明日!来るべき明日にプログラム・サバイバルを行う〜』
───…来た、か
それから先の内容は市井が言っていた通りのものだった。
『そういう訳やから最後の日を楽しく過ごしてや〜』
と言い残し放送は終了した。
───相変わらず人を苛立たせる放送しやがって!
中庭にいた人間達がどよめき始める。
先程まで語り合っていた友人、恋人、仲間をすでに疑いの目で見始めていた。
───そうだよね。ここにいる人達は利害の一致さえなければいつでも殺しあえるんだから───
後藤はそっとその場を去った。
- 93 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:52:50
- 保田の部屋にはもう吉澤と市井が集っていた。
「遅いぞ後藤」
市井の瞳はすでに真剣そのものだった。
「さっきの放送は聞いたね?明日ついにサバイバルが行われる」
一応の確認を取る市井に後藤達三人はうなずく。
「…全員揃ったから新しく入った情報を皆に伝えておく」
そう言って数枚の写真をデイパックから取り出して配る。
そこにはT&Cの残り三人と、知らない女が数人写っていた。
「これ誰ですか?」
吉澤が問う。残りの二人も市井の答えを待つ。
「こいつらは今回中澤が用意したハンター共だ。T&Cの他にその外人達がココナッツ、
その隣がシェキドルって呼ばれてる奴らだ」
ハンターとは管理室側の人間が用意した戦闘のエキスパートで、
本来は円滑に殺害の起こらないエリアに送り込まれ、
無理やりにでもその人数を減らそうとする人間達の事だ。
「こんなにいっぱい…」
後藤は今までにハンターなど1、2回しか見たことがない。
「恐らくかなりの腕だと思う。各自、こいつらを見たら気をつけるように」
「…T&Cがハンター?」
保田が疑問を隠せず口にした。
「…よっぽどRURUを殺されたのが頭にきたんだろうね。特にそいつらは要注意だよ」
そこまで言った後、市井はデイパックをゴソゴソやりながらさらに続けて言った。
「…それから…これは完全に予定外だった事なんだが…」
何か言い辛いことのようだ。市井の顔には珍しく躊躇の色が見える。
「今回のサバイバルに…飯田圭織が復帰する」
- 94 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:55:41
- 「い、飯田ぁ!?」
保田が顔が驚愕に歪む。
「……生きて…たんですか…」
吉澤が呟いた。後藤も絶句している。
飯田圭織。この箱庭で最も有名克つ、最も恐れられている存在。
殺害数は500人以上は確実と言われ
しかもその中の200人以上は完全武装した刑務所内の兵隊達だったという。
中でも恐れられていたのはその殺害方法で、彼女は直径50センチ程の二本カマしか使わず、
そのたった二本のカマで500人以上の武装した人間達を殺してきたのだ。
その出で立ちから『惨殺プリンセス』『暴走電波』等の異名でまで呼ばれていたが、
ちょうど半年程前にプログラム参加者全員とその警備兵までを全て皆殺しにしてしまい、
あまりの戦闘力を恐れた上層部がその時に全兵隊を投入して射殺した、という話だった。
その時は刑務所内の全員(警備員すら)が胸を撫で下ろしたものだった。
「…ああ。これはまだ私達ぐらいしか知らない事だろうけど。でもこう考えてみて?
彼女には敵の区別がない。ようするに私達も警備兵もいっしょくた、って事よ。
つまり。あいつがまた暴れまわってくれれば…きっと警備に穴があく」
市井は少し無理があるな、と思いつつも前向きに考えようとした。
「で、でももし会っちゃったら?」
「…逃げろ。死ぬな。くらいしかアドバイスできないわね」
不安げな後藤に市井は静かにそう言った。
- 95 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:56:50
- その後も作戦会議は続いた。
「話をまとめるわね。私と圭ちゃんはまず中央管理室を破壊する。
吉澤と後藤は命を最優先しつつ、出口近辺の警備兵達を片付けるなり、
ハンター達を倒すなりして本部をかく乱。この際通信機器は必ず破壊すること。
私達の仕事が終了しだい東西南北いずれかの脱出口から脱出」
市井はそこまで一気に言った後一息ついて、
「…質問は?」
と言った。
「どうやって合流するんですか?」
「ド派手な花火を上げてやるわ。そしたらそこに集合」
市井はなにかを企んでいるのだろうがあえてそこは誰も聞かない。
「質問が無いなら各自、部屋に帰って寝てちょうだい。多分朝起きたら…もう戦場よ」
普段のプログラムなら睡眠ガスで眠らせて戦闘エリアまで運び込まれるのだが、
今回の「サバイバル」は参加人数が多すぎるため、恐らく夜を徹して
全参加者を戦闘エリアに護送するだろう、と市井は見当をつけていた。
「……………」
「……………」
「……………」
市井他、三人は顔を下げたまま部屋を出ようとしない。このメンバーはそう簡単に死ぬ人間ではない。
だが、もし集合前にハンターに狙い撃ちされたら?飯田圭織に会ってしまったら?
プログラムに「絶対」は無い。今が顔を合わせる最期の機会かも知れないのだ。
- 96 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:58:37
- 「…おいおい、なんて顔してんだ。私達がさっきまでしてたのはなんだ?
全員生き残るための算段でしょ?」
市井はゴソゴソとまたデイパックを漁りなにかを取り出した。
「ほら。成功を祈って乾杯といこう」
それは全員が一番なじみのある水のボトルだった。
「なんだよ。酒なんかあるわけないだろ?」
乾杯って水で?というような三人の表情に市井が悪戯っぽい笑みで返す。
「…だね。今のわたし達にはそのボトルが一番合ってるかもね」
保田が市井からボトルを奪い取り、口をつけゴクッと飲んだ。
「あんた達もやりな。グラスなんてお上品なものはないからね!」
後藤、吉澤、市井、とその回し飲みは水が無くなるまで続いた。
水が無くなる頃には後藤は腹がポチャポチャいう程になってしまっていたが
さっきまでの不安は嘘のように消えていた。
「……………」
「……………」
「……………」
顔を見合わせて、それから一人ずつ保田の部屋を後にする。
誰もさよならは口にしなかった。
- 97 名前:007〜投稿日:2002/12/14 05:59:34
- ───…眠れない
後藤は天井を見つめながらずっとイグアナを数えていた。もう朝日も見えようとしている。
───あ〜!眠れない!もう!
ドタンバタンとベッドの上で暴れる。
市井さんの事は尊敬してる。圭ちゃんの事も大好きだ。
よっすぃーも付き合いは短いけど信頼できる奴だって事がわかった。
───…あたし寂しいって思ってる?
まさか!後藤は自分の考えを即座に否定した。
───でも…
あたしは迷ってる。そりゃ、こんな所はさっさとおさらばしたい。でもその後どうする?
家族の元へは多分戻れない。一緒に暮らすなんて出来るわけがない。あたしは犯罪者になるんだから。
ここから出たら最初に家族を一目だけ見よう。それだけが望み。でもその後どうする?
- 98 名前:007〜投稿日:2002/12/14 06:01:11
- 市井さんは一緒に連れて行ってくれるだろうか。
圭ちゃんはここを出てもあたしに安らぎをくれるだろうか。
よっすぃ〜とは仲良くやっていけるのだろうか───。
眠れない後藤のベッドの下からはゆっくりとピンクのガスが噴出し始めていた。
強力な睡眠ガスによって完全に後藤が寝入った後、二人の兵隊が後藤を護送車に運び入れる。
同じ頃、市井や保田も同じように護送車へ運び込まれていた。
宿舎の外には何十台もの囚人の数だけの護送車が並んでいたが、
一台の車のエンジンをかける音を皮切りに一斉に全ての車が走り出した。
恐らく最後の戦いの場になるだろう箱庭へ向かって。
プロローグ終了 序盤戦へ
- 99 名前:名無し募集中。。。投稿日:2002/12/16 17:44:04
- 皆殺しカオリ!!
飯田って、泣き崩れて何も出来ずじまいか、狂って殺しまくりな役が多いよね。
ま漏れもそういう役どころばかりさせちゃうんだけど。
何にせよ作者さんがんがってね!惹きこまれたよ!
- 100 名前:名無し娘。投稿日:2002/12/16 21:34:43
- このタイプのバトロワ小説は初めて見たけど
すごく惹きこまれてしまった・・・
引き続き頑張ってください
- 101 名前:007〜投稿日:2002/12/20 08:12:23
- レス感謝。このCGIゲームをネタ元にしているので興味があればどぞ。
永続的にやるゲームではないので良い時間帯ならサクッとプレイ出来ます。
http://cgi22.plala.or.jp/kenshin/btlryl.cgi
- 102 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:36:05
- 【5】
「…ちゅうわけや」
サバイバル前夜、中央管理室でその室長である中澤裕子が三人の女に向かって言い放った。
「つまりあたし達は解雇と?」
それに信田が返答する。
「そういうわけやないけどな。あんたらは攻める。
じゃあこの中央管理室を誰が守るっちゅうんや?」
「だからといって新兵を使うんですか?」
小湊は見るからに不機嫌そうな表情をしている。
「新兵言うても何万っちゅう候補の中から選ばれた四人やで。ひょっとしたらあんたらより…」
「なんやと?」
稲葉の体から殺気が溢れ出る。
「…とにかく、や。これはもう決定事項なんや。
明日は管理室には新兵四人を置く。あんたらは好きにしたらええ」
その殺気を軽く受け流しながら中澤は言った。
「ふん。後悔するよ」
それだけ言い残して三人は部屋を順番に出ていく。
一人残った中澤は煙草に火をつけ、窓から月を見上げながら煙を吐いた。
「もうすぐ…もうすぐなんや…」
つぶやきは煙草の煙よりも早く夜の闇の中へと消えていった。
- 103 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:38:09
- 『おはよーーーさーーーん!』
ビクッ、と体がその声に反応して吉澤ひとみは飛び起きた。
───い、いたたたた…
あの睡眠ガスは吉澤の体質に合わないのか、起きた時いつも頭が鈍く痛む。
『中澤管理長や〜この放送で起きない人は死ぬで〜』
中澤はいつもの決り文句を言う。
『今日という良き日を与えてくれたつんく帝に感謝するんやで〜!
昨日説明した通り、この島、全てのエリアを使ってるからな〜!
得意のエリアに誘い込む、なんてのもありかもな〜!
じゃあプログラム・サバイバル、頑張っていきま〜……しょ〜〜〜い!』
胸糞悪い(恐らく全ての人間がそう思ってるんじゃないのか)放送が終った後、
吉澤は立ち上がり深呼吸をした。
新鮮な空気が体に満ちていくのを感じ、吉澤の感覚が急速に目覚めていく。
───…よし
感覚を開放して意識を集中する。
周りに敵の気配は感じない。
見渡すとそこは市街地の中の低いビルディングの中のようだった。
箱庭にはまるで一つの小さな町のように森や畑、建物、さらには浜辺まである。
今までに戦闘エリアでは宿舎の影も形も見たことの無い事や護送車などを使用している
事から宿舎とは全く別の場所だという事が予想できた。
───…あたしは自分の仕事をするだけ
吉澤が市井に与えられた使命は本部のかく乱。通信機器や警備兵を撃破し、
細部にまで情報が伝わらないようにするのがその目的だった。
- 104 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:40:44
- デイパックを開ける。吉澤は殺害数ゼロのため、クレジットの預金が極端に少ない。
そのために武器を申請する事ができないのでデイパックにはそれ以外のものが入っていた。
吉澤は軽量化のために地図とコンパス、それと小さな水のボトルなどを捨てた。
箱庭に一ヶ月もいれば地図とコンパスなど必要なくなる。水も探せば見つけることが出来るので、
体力のある吉澤にとって持ち歩くほどの価値はなく、
中には申し訳程度の包帯などの医療品だけを残した。
───…いつもなら始まってすぐに銃声なんかが聞こえるもんだけど…
やっぱ市井さんが言ってたように手練の人間しか参加してないのか───
吉澤は一層気を引き締める。
───それでも、あたしは誰も殺さない
この誓いは絶対に破らない。例え自分が殺されるとしても。
吉澤はたった一ヶ月前に会っただけのプッチの三人をすでに信頼していた。
最初にあの三人に出会った夜、人殺しと彼女達を罵った時、三人の瞳に深い哀しみを感じた。
───きっとみんな助かる
吉澤は市井の強い眼差しを信じた。
絶対にみんなを助けると言ったあの瞳を。
───あの人に…もう一度会うんだ
彼女もまた後藤達と同じように生きてもう一度会いたい人が存在した。
吉澤は拳を握り締め、走り出した。自分の命をその手で勝ち取るために。
- 105 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:43:13
- 『おはよーーーさーーーん!!!』
どこかのエリアの廃屋内に寝かされていた市井紗耶香は中澤の放送に目を覚ますと、
放置されていたデイパックから自分の武器スナイパーライフルを取り出し、
すぐにでも使えるようにして肩にかけた。
武器の借用は特別な事情でも無い限り自由に行える。吉澤のように武器を借用しないという事も
可能だし武器のほかに防弾チョッキや防刃ジャケットなどの防具を借りる事も出来る。
しかし結局殺害数の稼げない人間は借金をする事になり、
水さえ満足に与えられない懲罰房へ入れられる事になる。
市井は刀や鈍器などの近接武器はもちろん拳銃、機関銃、手榴弾等全ての武器の中から
最高額ともいえるこのスナイパーライフルを選び使用していた。
本来、三脚を使い定められた姿勢でないと致命傷は与えられないはずのこの武器を市井は近距離でも
走りながらでも狙った場所から10センチと違わない場所に確実にヒットさせる事が出来た。
それが市井紗耶香の超人的な強さを支えていた。
『今日と言う良き日を与えてくれたつんく帝に…』
「……正午か」
窓から顔は出さずに太陽の傾き具合を見て
今の時刻を判断した市井は放送が終る前に行動を開始する。
───今日で全てを終らせる
市井もまた走り始める。その瞳に強い決意を宿して。
- 106 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:43:51
- 保田圭は元々薬の効きにくい体質だった。
そのせいで小さいころに歯医者で麻酔が効かずに地獄を味わったこともある。
───そ〜んな体質がまさかこんなとこで役に立つとはね…
保田は眠ったふりをしながら護送車で戦闘エリアに送られていた。
彼女には睡眠ガスはほぼ効果が無く、ほんの2、30分で目を覚ます事が出来た。
───な〜るほど…今日はポイントBの14の森からか…中央管理室からは遠からず近からず…
護送車は目的のポイントに到着したらしく、
二人の兵隊が保田の腕と足を持って車から降ろそうとした。
───あ、ちょ!胸さわんな!
箱庭に入れられた当時は声が出そうになって焦ったりした事のある保田だったが、
いまやたぬき寝入りの達人と化している。
護送車が去ると同時に保田は起き上がりいつものようにトラップを張り始めた。
参加者同士をあまり近くに放置する事は少ないので動き回っても護送車に見つかる事は少ない。
発信機も今のように参加者全員が護送されている状況では保田一人の動きを捕捉出来るほど
優秀なものではないようだった。事実、この反則行為をとがめられた事は一度も無い。
あらかた自分の周りにトラップを張り一息つく。
「さて…と。そろそろかな?」
保田がその言葉を言い終るが早いか中澤の放送が始まった。
- 107 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:44:50
- 「…くしゃん!………はえ?」
後藤真希が自分のくしゃみで目を覚ますとそこは遊園地だった。
「な、なんだ?こんなエリアあったっけか?」
初めて見る場所だった。とりあえず銃を拾おうとして後藤は驚愕した。
「…デイパックが……無い?」
後藤は焦った。自分でも信じられない位うろたえた。
「ちょ、ちょ、ちょ、やばいよ?死ぬっていくらなんでも!」
周りを見回してある事に気付いた。なんだか視線がやたら低い。
「………っ!」
後ろに気配を感じ素早く振り返る。相手がこちらを認識するまえに飛びかかり組み敷く。
しかし後藤が組み敷いた相手は年端もいかない子どもだった。
「……ユウキ?」
組み敷かれた幼い弟は信じられない、といった表情をしていたがやがて涙ぐみ…
「うぇ、ぇぇぇぇ〜ん!!」
泣き始めた。
遠くに見えるバンジージャンプのアトラクションからは
抱かれたくない男No1の芸能人が飛び降りていた。
- 108 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:45:29
- 「真希!なんでユウキを泣かすの!」
後ろからあびせられる怒声。聞き覚えのある声。
「…お母さん?」
「イケないお姉ちゃんね…よしよし…」
その声の主は泣き叫ぶユウキを抱っこする。
「…あれ?」
気付いてみると手がやたら小さい。服も絶対着ないような子供用のワンピースを着ている。
後藤は子供になっていた。
「もう…なんでユウキを泣かせたの?」
優しく、暖かい声をかけてくるあまりにもなつかしい声。
「…ぅぅぅ…わぁぁぁ〜ん!」
たまらずそのなつかしい人に抱きついた。
「こら、どうしたの?」
「こわい夢見たの…すごく怖い夢…」
声まで舌足らずになっている。
「そうなの。大丈夫よ。お母さんがいるから…大丈夫…」
後藤は母親の胸で泣き続けた。
- 109 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:47:05
- 「ハッ!?」
ガバッ、と今度こそ目を覚ます。
「…なんでこんな時にこんな夢を…」
頬にまだ残った涙を拭う。しかも中澤の放送まですでに終ってしまっている。
───最悪…夜更かしのせいかな…
涙でぐちゃぐちゃになった顔を洗いたいと思ったが水道など当然無い。
畑の隣の農道に放置されていたらしく、
服に少し乾いた土がついていた。少し遠くに民家も見える。
───まあ生きていただけでよしとするか
周りを探り自分のデイパックを探す。
「……は?」
そこに求めていたものは影も形も無かった。
「……は?」
もう一度言ってみる。誰も答える者はいない。
「……あは、あははは……」
後藤にとってとんでもない部分だけが正夢となってしまった。
【プログラム・サバイバル開始】
- 110 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:48:21
- 【6】
保田圭は市井と合流するために中央管理室に向かっていた。
箱庭で長い間生き抜いている保田にとって箱庭はまさしく庭のようなもので、
自分が放置されていたエリアから最短の距離で中央管理室に向かう。
───走っていきたいとこだけど…
それは出来ない。この辺りの林道付近のエリアはどこから狙撃されるかわからないからだ。
慎重かつ迅速に歩を進める。だが突然鋭い殺気を感じ、立ち止まった。
───敵か?…近い!
相手もこちらの存在にすでに気付いているようで、動く気配は無い。
───…く、こんな近くに来るまで気付かないなんて
…本当に今回の参加者はやり手のようね…
素早く隠れ、様子を窺う。相手は確実に4、5メートル付近に潜んでいる。
「……………」
「…保田さんですよね?プッチの」
しかし相手は何を考えたか遮蔽物から堂々と姿を現し、よく通った声で話し掛けてきた。
───…わたしを知ってる?
「…だとしたら?」
保田の方は遮蔽物から顔を出さず答える。
「ナイストゥーミーチュー。あたしはココナッツのミカと言います」
なにやらフレンドリーな態度だがその殺気は痛い程に感じる。
「へ〜。そりゃナイストゥーミーチュートゥー。何か用かしら?」
保田は基本的に銃を携帯しない。相手が銃を持っているなら圧倒的に不利な状況だった。
「いやあ…なんて言うんだっけこういうの日本語で…ああ、そうだ…」
「死ね!!」
ミカは一呼吸で保田の見える位置まで移動した。
- 111 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:49:14
- 「チッ!」
保田もミカの姿を確認すると同時に森の中を一気に駆け出した。
保田もなかなか個性的な輪郭をしているが保田が目にしたミカは保田以上に
輪郭のある部分が出っ張っていた。
───ホ、ホームベースだ!
自分の事を棚に上げ失礼な事を考える。それを察知したかのようにミカは銃の引き金を引いた。
後ろからはだらららら、という独特の音が聞こえてくる。
───最悪…機関銃か。それもM3グリースガン!
M3グリースガンとはその形状がグリスを注入するグリースポンプに
似ていた事からこう呼ばれている。この銃は波浪帝国では比較的メジャーな武器といえた。
なぜなら一昔前に某有名アイドルが缶詰の中から飛び出し、この機関銃をそこらかしこに乱射し、
「カ・ニ・カ・ン♪」と言う蟹の缶詰のCMが当時大流行したからだ。
しかし現実にはそんな可愛らしい武器ではなく、米軍で正式採用されていた
歴史もある程の確かな殺傷力を持っている。
- 112 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:49:48
- 「あなたの事は聞いてますよートラップの名手だって?アハハハ」
ミカの戦闘スタイルなのか、喋りながらもかなりのスピードで保田を追う。
「でもよく生き残ってこれましたねーそんなんで。
でも顔が弾痕で歪んでるじゃないですか、はははっ」
───…勝手な事いいやがって!
ミカはベラベラ喋りながらも有効範囲まで追いつくまでは発砲しない。確実な熟練者の証拠だった。
保田は木々の間を縫うように走り逃げながらある地形を探していた。
───違う。これも違う…
「こういうの日本語でなんていうの?ああ、ブサイクだ。はははっ」
───…これだっ!
保田は突然クルン、とバレリーナのように華麗に両手を広げながら廻って跳んだ。
タンッという心地よい音が響く。そして着地した後、再び逃げ始めた。ミカは構わず追いかける。
「はー?なにやってんですかー?こういうの日本語で…ッ!」
ミカの胸にドンッと押されたような衝撃が走り、言葉が止まった。
- 113 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:51:41
- 「ウゲッ!!」
その激しいショックにミカは銃を取り落とした。声を聞いた保田がピタ、と足を止め、
注意深く戻ってくる。ミカの胸元には何か細いものが食い込んでいた。
「ぐく、ワ、ワイアロープ?そんな、さっきあんたも同じ場所通ってたジャナイ…」
ミカは保田の武器がワイアロープである事を知っていた。銃を携帯しない事も。
だからこそわざと保田に姿を見せ、相手と同じ地形を通る事でそのトラップを防ごうとしたのだ。
「そりゃそうよ?だってさっき仕掛けたんだもん」
その特別製のワイアロープは今、後ろからミカを押すと上下真っ二つにしてしまう程の鋭さだった。
そんなミカを横目で見ながら保田は悠々と投げ出されたミカの銃を拾い上げる。
「そ、そんな…」
保田は逃げている間に間隔の1・5メートル程の木々を見つけ、その間を走り抜ける時に
回転しながら飛び、同時に超スピードでワイアロープを張った。
突然のジャンプのみに気をとられたミカは、その行動の意味に全く気付く事が出来なかった。
「ところで?あんたみたいなの日本語でなんていうか知ってる?」
「ノウッ!?」
保田が銃口をミカに向けると、みるみるミカの表情が強張る。
「ゲス野郎って言うのよ」
銃口から無数の弾丸が飛び出しミカの生命とその器を完全に破壊した。
「……………」
保田はちょっと考えた後、その銃を自分のデイパックにしまい足早に去っていった。
【ミカ 死亡】
- 114 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:53:02
- 市井紗耶香はいち早く目的の場所まで到着した。
中央管理室が一望できる丘の上。
───ふう。一息つけるか
ここで保田の到着を待つ予定だった。
ここまで市井は気を張りっぱなしで来たのだがまだ敵に一人も会ってはいない。
───ひょっとしたらレベルを高めるために人数をさらに絞ったのか?
市井に不安がよぎる。
そうだとしたら計画の成否に関わる。
───…もうサイは投げられたんだもんね。後戻りは出来ない
茂みに身を隠し気配を殺す。このまま保田の到着まで時間を潰すつもりだった。
だが自分が気配を殺した事により市井はある事に気付いた。すでに誰かに囲まれている。
───ッ!なんてマヌケだ。ずっと追われてたんだ!
敵の気配は二つ。忍び寄ってくる気配に身構える市井に敵の顔がチラリとだけ見えた。
───…あれは確か…ココナッツのアヤカにレフア…
まずいかもしれない、市井は思った。
相手の武器も能力もわからない以上二人同時に戦うのは危険だ。
───…どうする?
考えている間にも相手は距離を詰めてくる。
やがて市井はひとつの決断をした。
- 115 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:53:49
- 「……………」
市井は考えるのをやめ、目を閉じ自分を完全に空っぽにした。呼吸音すら聞こえない。
その姿はまるで気絶したかのようにも見えた。
今の状態で見つかってしまうと間違い無く殺されてしまうだろう。
しかしその時、ココナッツのよどみなかった動きに異変が起きた。
「……逃げられた?」
ガサガサと茂みからレフアの姿が現れる。
「……みたいね」
反対からアヤカも姿を見せた。
「私達の包囲から逃げられるなんて初めてなんじゃない?」
「そうね。プッチの市井紗耶香…噂だけじゃないってとこ?」
母国語で話し合うレフアとアヤカ。
「なんで真っ直ぐここ目指してたのかな?」
「さあ…てっきり仲間と合流するもんだと…」
キョロキョロと周りを見回す。二人は何故市井の気配が消えたかも疑問に思っていた。
気配を殺した、レベルでは無い。完全に消えたのだ。
「…しょうがない。ほかを…」
レフアがアヤカに声をかけた時、レフアの額に穴が開き、ガクン、と後ろ向きに倒れた。
「WHAAAAAAAAAT!?」
アヤカが体に巻いていた武器の手榴弾に手をかけるが、茂みから飛び出した市井は素早く照準を
合わせ引き金を引いた。スナイパーライフルの弾丸が正確に手榴弾ごとアヤカの手を貫く。
ドウン、という派手な音と共にアヤカの半身が姿を消した。
- 116 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:55:02
- 「あ、ああああ…」
運良く、否、運悪く即死を免れたアヤカの口から声がもれる。
「……………」
市井は無言でガチャリと弾丸を込めた。
市井はわざと一呼吸置きアヤカの反撃を誘い、アヤカが投げようとしていた手榴弾を狙撃した。
体に巻いていた手榴弾との誘爆を避け、自分に及ぶ被害を無くすためだった。
「どうやって…」
「…あんたらに挟まれて戦うのは得策じゃないからね。
息を完全にひそめてまとまるのを待ってた」
「……さすが、ね」
───あの状況で息をひそめるなんて───正気の沙汰じゃないわよ───
ガクリ、とアヤカが崩れ落ちた。
「いま楽にしてあげるわ」
ライフルをアヤカに向ける。
「…十字を、切って、もらえる?」
自分ではすでに十字を切り様が無い姿になってしまったアヤカが息も絶え絶えに伝えた。
市井は言われた通りに胸の前で十字を切る。
「…サンキュー」
止めを刺すまでもなく事切れたアヤカの顔は何故か穏やかなように見えた。
「……………」
市井はもう一度だけ胸の前で十字を切った。
【アヤカ 死亡】
【レフア 死亡】
- 117 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:55:34
- ───夢?夢でしょ?これ夢だよね?
後藤真希はいまだに現実を受け入れられずオタオタしていた。
しかしそろそろ現実を受け入れないと死ぬ、と思ったのか
畑の隅の茂みの中に潜みつつふぅ、とため息をついた。
「参ったな〜……」
幸運にもまだ敵とは出会っていない。というか出会ったらヤバイ。
───な〜んか足んない、なんか足んない…
即興で作った歌を頭の中で歌う。
───ば〜か〜や〜ろ〜ぅ〜〜…
後藤は現実を逃避し始めていた。
- 118 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:57:00
- その頃吉澤ひとみは市井に教えられた西の脱出口方面に向かっていた。
───初めの内に出口近辺の警備兵達は無力化しておいたほうがいいよね
吉澤の脚力は同年齢の女子達とは比べ物にならない程に
優れていたので短時間で目的の場所に到着した。
身を隠しながらヒョコッと顔だけだして覗く。
───…ひい、ふう、みいの、…七人か
出口の門が見えるひらけた場所で七人の警備兵が簡易テントを貼って駐屯している。
数人が機関銃と防弾スーツで完全武装しているようだがテントの中で談笑している警備兵は
完全に気を抜いているようで銃すら手にしていない。
───…楽勝!
吉澤は姿を見せると一気に突進しそのまま体重を乗せた掌低で兵士の一人を弾き飛ばした。
───ひとつ!
異変に気付いた他の兵隊が吉澤に注意を向けた時にはすでに距離を詰め、
正拳を胸にぶち込む。防弾アーマー越しに胸骨を破壊する感触が吉澤に伝わった。
───ふたつ!
「敵襲……かッ!?」
さらに駐屯所から出てきた二人の後頭部に蹴りを一発ずつ打ち込んだ。
───四つ!あと三人!
簡易テントに飛び込んだ吉澤は本部に連絡をとろうとしている兵を手刀で眠らせ、そのまま
肘を打ち下ろして通信機を破壊した。
───五つ!
残りの二人が護送車で逃走しようとしているのを確認した吉澤は素早く回り込み、
護送車に乗り込む前に捕らえ、一瞬のうちに絞め落とす。
「七つ、っと」
ほんの一分足らずで武装した七人の兵士はあっけなく無力化したのだった。
- 119 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:58:45
- 手早く警備兵の武器を使用不能にし、兵達を縛り上げて近くの林に放り込む。
───半日は目を覚まさないでしょ
と確信した後、また別の脱出口を目指して走り去っていった。
吉澤が立ち去った後の駐屯所に二つの人影がソロリと現れる。
「…ふわ〜…秒殺ってやつ?」
「すご…あの人、素手で警備兵全員倒したよ…よかった戦わなくて…」
二人の少女は話しながら駐屯所の辺りを詮索する。二人はずっと吉澤を追跡していたのだ。
「今ならここから逃げられるけど…どうするあさみ?」
少し体格の良い女が一回り小さい少女に向かって聞いた。
「…やめようよ。多分、あの人も脱出を考えてるんだと思う。それが今逃げなかったって事は、
何かあたし達の知らない事があってまだ逃げられないんだよ」
あさみと呼ばれた少女が答えた。その周りには何故か二匹の犬が居る。
- 120 名前:007〜投稿日:2002/12/20 09:59:34
- 「そっか。じゃああの人についていこ。
距離おいて気配消してたら多分大丈夫だと思うし」
「いい加減だなありんねは…」
あさみはあきれた顔をして呟く。
「いつもの事でしょ」
りんねはなぜか胸を張って言う。
「まあね」
りんねとあさみ。この二人はこの箱庭において生き残るのに最も必要なものを持っていた。
『運』
実力の足りない二人だったがとてつもない強運で今まで生き延びてきた。
現に今回も敵に出会う事なく二人はすぐに合流できたが、
それを幸運という事にさえ気付いていない。
「武器は?」
「駄目。全部使用不能にされてるよ」
「ほんじゃ、いくか?」
「そうね」
数分後、二人は再びあまり見事とはいえない追跡を始めるのだった。
- 121 名前:007〜投稿日:2002/12/20 10:00:53
- 「………ハッ!」
たまたまポケットに入っていた袋入りのプチシューを
(後藤の私物。こんなものを貴重なクレジットで購入した事に当然、市井は激怒した)
かじっていた後藤真希は突然に我にかえった。
───何やってんだあたしは!?普段のプログラムなら借金が増えるだけで
すむけど今回は他のみんなに迷惑がかかるのに!!
しかし銃の無い現実は変わる事はない。
───…どうしよう
三択です。答えなさい。
1・可愛くて頭のいいごっちんは突如このピンチを回避するアイディアを思いつく。
2・仲間が来て助けてくれる。
3・助からない。現実は非情である。
───あたしとしては答え2に期待したい所だけどそれは無理かな。
ひょっとしたらあっちもピンチに陥ってるかもしれないし。だからここは……
「答えは1だっ!誰かをやっつけて武器を奪えばいいのよ!
銃は無理でもナイフくらいなら素手でも奪えるかもっ!」
小さく物陰でガッツポーズを決める後藤の目の前に一人の体格の良い少女が目に入った。
巨大なロケットランチャーをそのたくましい肩にぶら下げた少女が。
───………答え3…答え3…答え3…
後藤の脳裏にその言葉だけが繰り返されていた。
- 122 名前:007〜投稿日:2002/12/20 10:01:56
- 「でもやるしかないッ!」
後藤は可能な限りのスピードで一気に間合いを詰める。
今の距離でロケットランチャーが命中すれば粉微塵になってしまう。
だが迷いを捨てたのが功を奏したのか、後藤は相手が戦闘態勢をとる前に
ロケットランチャーの死角である近距離まで近寄る事ができた。
「つあああああッ!」
大きく振りかぶった右ストレートが相手の顔面にクリーンヒットした。
「ウォウッ!?」
殴られた体格の良い少女はココナッツ最後の生き残りのダニエルという少女だった。
「が、外人さん?」
一瞬驚きはしたものの(波浪帝国は準鎖国体制にあるため外人は珍しい)素早く次の攻撃に移る。
後藤は相手がロケットランチャーを手にしている事によって
生じる動きの鈍さに付け込んで連撃を浴びせる。
「You bitch!!(このアマ!)」
怒りに震えたダニエルはロケットランチャーを放り出してファイティングポーズをとる。
後藤は一目散に逃げ出した。
- 123 名前:007〜投稿日:2002/12/20 10:02:49
- 「Wait!(待ちやがれ!)」
逃げ出した後藤をダニエルが追いかけるが、軽量級の後藤の方がはるかにスピードは早い。
後藤は近く見えていた民家に玄関から飛び込み、そのまま裏庭に抜けて民家を駆け抜けた。
「Where are you bitch!!(どこだゴルァ!!)」
その後藤の動きを予測出来なかったダニエルは民家の中を探し回る。
しかし後藤には最初から別の思惑があった。
元の場所に戻った後藤は、放置されていたロケットランチャーを背負い発射体勢をとる。
───えっと、たしか市井さんに教えてもらったはず…こうだっけ?
記憶を頼りに手順を踏んで後藤はロケットランチャーの引き金を引いた。
思っていたよりも軽い手ごたえで砲弾が
さきほど駆け抜けた民家の方へ真っ直ぐ飛んでいき……
「…ロケットランチャーか…重いし嫌だなあ…」
倒壊した民家を尻目に後藤はやっと本来の目的遂行のために動き出すのだった。
【ダニエル 死亡】
- 124 名前:007〜投稿日:2002/12/20 10:03:41
- 「……なんやねん…」
中央管理室の巨大なスクリーン上のランプの一つが
生存を示す緑色から死亡を示す赤色に変わった。
隅の方にははっきり【死亡】というドットの文字が使用武器と死亡時間と共に浮いている。
「……もう全滅しよった…」
中澤裕子は自分の手元の書類の番号と
死亡した人間の番号を見比べる。間違い無く死んでいる。
「か〜!!何が凄腕のユニットや!始まって一時間もせんうちに全滅やん!
これやから上の連中のお墨付きなんぞは信用できんのや!」
忌々しげにココナッツの写真付きの履歴書をゴミ箱に放り込む。
───ま、偶然にも相手は全員プッチや。仕方ないけどな───
「やっぱこっちにしといた方がよかったんかなあ……」
中澤は手元にあった「CUBIC−CROSS」と書かれた書類に目をやる。
そこには頭の禿げかけた気味悪い男と恐らくこの国の人間ではない大陸系の顔をした男が
肩を組んでブイサインをしている写真が貼られていた。
「ま、ええか。まだまだハンターは居るし。…でも」
中澤が椅子を回転させ後ろを振り向く。
「あんたらはあの程度やないよな?」
そこに姿勢正しく立っている四人の兵士。
朝方の到着以来一歩も動いてないようにさえ見えた。
- 125 名前:007〜投稿日:2002/12/20 10:04:42
- 「もちろんです中澤管理長。いえ、もう総管理長ですか?」
そのなかの一人、一番小柄な兵士が姿勢を崩さず返答した。
「ふふっ。その呼び名はこのサバイバルが終ってからやね。えっと……」
「新垣。新垣里沙少尉です」
「ああ、新垣少尉。あと、高橋、小川に、紺野……やったかな」
「「「はっ!」」」
残りの三人が息を合わせたように敬礼する。
「ま、ええわ。もしこの中央管理室を狙うような
不届きもんがおった時はよろしゅうたのむわ」
「「「はっ!」」」
───ま、お前ら程度がどこまでやれるか知らんけどな───
中澤は手に持っていた男達の写真をグシャリと握りつぶして捨てた。
- 126 名前:名無し募集中。。。投稿日:2003/01/04 05:54:44
- CGIのほうによく参加していたものなんで、
まじ最高です!!自分がやってたゲームが小説になるのっておもしろいですね!!
もちろんcgiのほうに参加してない人にも十分楽しめる作品だと思います。
わかりやすい文章ですしcgiにはなかったオリジナルなアイディアもありますし。
この小説は本当おもしろいです。
作者さん気楽にがんばってください。
- 127 名前:名無し募集中。。。投稿日:2003/01/04 05:56:26
- 前作のカードゲームも時間を忘れて集中できるほどおもしろかったです!!
- 128 名前: